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神崎蘭子の王座戦第四局グリモワール

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ご機嫌よう。我が名は神崎蘭子…この度はグリモワールに第63期王座戦五番勝負第4局の記録を記すことにしたわ。

魔王が先取して始まったシリーズ、しかし貴族が二局三局と連取したの。特に第3局の星屑の輪舞曲は見事だったわ。まさに貴族の輪舞曲の強さを象徴する将棋といえるわね!

険しい流れの中、魔王が自らの牙城たる王座を守り切れるか…天界の注目を集める中、運命の勝負は始まったわ!

 

戦型は▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩△8八角成▲同銀から堕天使の円舞曲になったわ。

 

堕天使の円舞曲の使い手といえば、芭蕉扇の棋士、流雲の芸術家、哲人竜王が名を成しているわ。
先手は▲7八金を聖櫃に収めることでさらに速く剣を振りかぶれるよう構えているの。
しかし、気に掛かるのは△3二金…この軌跡は堕天使の円舞曲の過去の姿、先手の速攻に滅ぼされし歴史の残像。証拠にかつて魔王が貴公子の追い詰められし時、同じく奏でた堕天使の円舞曲では三手目に天使を討ち違えさせているわ…。
魔王の策謀は何かしら?

△2二銀▲6八玉△3三銀▲3八銀△7二銀▲5八金右△7四歩

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△7四歩で後手の策謀が明らかになったわ。後手は既に駆逐されている、鎮座せし銀ではなく、先陣へ翔る銀の矢…△7三銀~△6四銀での速攻を見せているわ。

▲7七銀△8四歩▲7八金△9四歩▲3六歩△7三銀▲4六歩△8五歩

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速攻を表明した後手はレジスタを待機する意味もない。着々と兵隊を進撃させ攻撃陣を整えていくわ。
対する先手は▲4六歩のところは▲3七銀として双方が銀の矢を放つ未来もあり得たわね。魔王はかつてその世界を経験しているわね。
『第52期王位戦第2局
http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/oui20110726_27.html

▲4七銀△6四銀▲3七桂△4四歩▲7九玉△5二金▲4五歩

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ここで貴族が仕掛けたわ。もう一手待てば△7五歩と銀の矢を放たれていたでしょうから、ここが賽を投げる時と見たのでしょう。
この時、魔王の玉は創世の地に立ったまま…だけどこの場合は戦場から遠いという利点があるの。
後手は先攻しようと銀の矢を武器として選んだのだから、先に攻められてしまっては面白くないかもしれないわ。
それでも△同歩▲5六銀△4六歩とすり抜けられると先手が一方的に魔術を放ち続けられるわけでもない…。策謀としては先手が一本取りつつも、天秤はまだどちらにも傾いていなかったのかも。

△同歩▲5六銀△4六歩▲6六歩△3五歩▲6五歩△7三銀▲4五桂△3六歩▲4八金△5九角

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貴族の流れを自在に操る▲4八金に、魔王の△5九角…仇敵に矢を放たんとする寸前に金を離す、そして狭き隘路に放たれる角。どちらも『瞳』を持つ者にしか見えない世界…。こんな世界が、私にもいつか見える時が来るのかしら…?

▲2六角△4三金左▲6八銀△4八角

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△4八角成には私の真結界が破られそうになったわ。私も△6八角成と先手陣の守護結界に傷をつけたいと思っていたから。
魔王は貴族に余分に魔力を与えるのを嫌ったようね。だけど、△4八角成は魔王だけが持つ世界観を感じるわ。
まるで貴族の刃を捻れた時空でかわそうとしているかのよう…!
少しの過ちで全てが壊れてしまうガラスの世界を、現世に繋ぎ止めるこの指し回しこそが本当の羽生マジックなのよ。

▲同飛△4四銀▲同角△3七歩成▲4六飛△4四金▲7一角△4五金▲同飛

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▲7一角、あるいは▲同飛が結果的に二人の運命を分けたようね。
▲7一角では▲5三桂成も輝ける一つの道筋…また▲同飛では▲同銀△7二飛▲5四銀!も指摘されていたの。
これは電脳の怪物が指摘した手で、こんな魔術を放たれては私の真結界も破れてしまったでしょうね。


△7二飛▲6四歩△7一飛▲4一銀

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前の盤上世界が命運を分けたのは次の一手があるから。
ここで後手に、先手陣を穿つ魔弾があるわ。

△6九金!▲8八玉△4四歩

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この△6九金が不協和音のようで、妙なる調べを奏でているの。▲同玉は△3六角で王手の首に刃を突きつけながら重臣を討たれる。
常ならば金を贄にしてのこの魔術は負担が大きく、余りよい術式ではないのだけど、ここは先手の飛車の魔力が強かったので、天秤は後手に傾くことになったわ。

されど▲8八玉に△4四歩、このレジスタを討てば再び先手の玉に刃が突きつけられ、重臣は討たれる…。
この宿命は避けられない。ついに天秤は魔王に方に傾いたわ。

▲3五飛△4一玉▲6三歩成△3四歩▲同飛△3三銀▲3七飛△6八金▲同金△5九角▲3八飛△4九角▲3四歩△3八角成▲3三歩成△同桂▲6九金打△6八角成▲同金△8六歩▲3四歩△8七歩成▲同玉△8六歩▲7八玉△8七銀▲6九玉△3九飛まで後手の勝ち

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以下、後手が弛むことなく先手の玉を追い詰め、討ち取ったわ。△4四歩の時、既に将棋としては決着はついていたわね。
この将棋は早く戦いが始まりながらも、黄昏はなかなか訪れなかった。貴族の剣が届きそうな中で、魔王の次元を操る魔術は見事だったわ。