高垣楓の『第65回NHK杯3回戦第8局 藤井猛九段―北浜健介八段』観戦記

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こんにちは、高垣楓です。今回のグリモワールは私が書いていきますね。
観戦記を書くのは初心者だから、とても緊張してしまいます。こう見えてしょうしんものなんです……なんて、ふふっ♪
頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。

  

 

第65回NHK杯3回戦第8局 藤井猛九段―北浜健介八段

先手: 藤井猛 / 後手: 北浜健介
▲7六歩△3四歩▲6八飛

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日曜日の朝のひととき……NHK杯です。
プロダクションでも日曜日の朝は皆テレビに釘付けで……特にこの将棋は人気のある藤井猛九段と、2回戦で羽生名人を破った北浜八段の対局ということで、特に注目が集まっていました。
解説の行方八段が好きな娘達もたくさんいましたね。
みんな本当に将棋が好きです。
先型は藤井九段の角道オープン型の四間飛車
さて、勝利の行方はどちらに微笑んだのでしょう?
 
△4二玉▲4八玉△3二玉▲3八玉△6二銀▲2八玉△8四歩▲3八銀△5二金右▲2二角成△同 玉

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角交換四間飛車はお互いに角を持ち合うため、手詰まりになりやすいという性質があります。後手番なら手詰まりで千日手も歓迎なのですけど、先手では自分から手を作っていかないといけません。より専門的と言えるでしょう。
▲2二角成に北浜八段は△同玉で取りましたけど、ここは同銀もあるところでしたね。
同銀なら矢倉、そこからさらに穴熊という展開も考えられます。
△同玉の場合は左美濃から銀冠の狙いですね。
 
▲8八銀△3二銀▲7五歩△8五歩▲7八飛△6四歩▲7四歩△6三金▲7三歩成△同 銀▲7七銀△7四銀▲5八金左△3三角

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先手は▲7五歩~▲7八飛~▲7四歩と一直線に仕掛けました。
これが後手盤なら▲7六飛と大人しく石田流っぽく浮いていたかもしれませんが、先手だから積極的に動いているんですね。
一歩持てば攻め筋が広がりますので、千日手になる可能性は低くなります。
△6三金は力強い受けですね。囲いから金が離れるようですけど、対石田流においてはよく見られる手筋で、金銀の厚みで先手の捌きを抑え込もうとしているんですね。
お互い一歩を持って一服……かと思ったらそうはなりませんでしたね。
△3三角の自陣角が放たれました。

 
▲6六歩△7三桂▲6八飛△1四歩▲1六歩△2四歩▲4六歩△2三銀▲3六歩△3二金▲4七金△6二金▲2六歩△8一飛▲3七桂△5四歩▲5六歩△6五歩

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▲6六歩から△7三桂で後手としてはいつでも△6五歩の仕掛けが生じていますね。
ただし先手陣の方も固く持ち角もあるですぐに動くのは無理筋でしょうか。
端歩を突き合い、先手陣は高美濃に、後手陣は銀冠に組み替えました。
後手の△6二金~△8一飛も角打ちを警戒した細心の手順です。
こうすることで△5四歩とした時に、後手陣には7一の地点に角打ちの傷がありません。
そんな様子を先手は高見の見物……とはいきませんね。ふふっ。
じりじりとした神経戦になっています。
互いの駒組みが飽和したところでついに△6五歩と仕掛けました。
△6五歩はなかなかうるさいですね。
▲同歩は△8六歩▲同 歩△7六歩▲8八銀△8六飛▲8七歩△8一飛で、これは先手不満でしょう。

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先手は7六歩の地点が傷になっているのですけど、しかしここで▲7六歩と打つのでは流石に悔しすぎますね。

 

▲9八香△8六歩▲同 銀△6六歩▲6四歩△7六歩▲7五歩△8三銀▲8八角△6七歩成▲3三角成△同 桂▲6七飛△7八角

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実戦は▲9八香とさらに待ちました。
振り飛車の手筋で、角を予め避けています。
とはいえ△8六歩の突き捨てが入って後手がペースを握りつつあるといったところでしょうか。
▲7五歩に△6五銀と駒を前に出すと▲6三歩成△同金▲7二角でこれはいけません。
△8三銀は少し悔しいようですけど、先手の▲7二角を予め防いでいます。
▲8八角に対する△6七歩成は鋭い一着だったように思います。
角交換して△3三桂も後手のポイントのように見えますし、最後の△7八角がなかなか厳しいです。 

▲6八飛△8七角成▲6三歩成△8六馬▲6四飛△7五馬▲8二歩△2一飛▲6九飛△6八歩▲同 飛△6七歩

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▲6八飛に対する角の成る場所は二つありましたけど、北浜八段は△8七角成と銀を狙う方を選択しました。
遊んでいる銀を相手にしているようですけど、銀を取った手がそのまま飛車取りになるし、馬の働きもこちらの方がいいという判断でしょう。
実際後手は銀得を果たし、馬の位置も強力です。
△8七角成からの構想…北浜八段は馬の使い方が上手いですね。
ここまでは着実に後手がリードを保っていたように思います。
▲6八飛に対する△6七歩が後の感想戦で北浜八段が後悔した一着でした。
ここでもし△8六馬だったら、馬の力で先手の飛車の逃げ場がいよいよ難しく、どこへ行っても飛車を抑え込まれてしまい後手が優勢を維持していたでしょう。

 
▲8八飛△6三金▲8三飛成△6八歩成▲7二龍△6二歩▲4八角△同 馬▲同金上△5八銀▲6四歩△4七銀成▲同 金△5八と▲6六角△4四角▲同 角△同 歩▲6六角△6四金

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▲8八飛は銀取りですが、△8七歩~△8六銀と無理矢理抑えようとしても▲6七飛と横にかわされてしまいます。
仕方がないので△6三金とと金を払いましたが、▲8三飛成と抑え込まれそうだった飛車が竜が成れた上に銀まで手に入ったので、差はかなり縮まったと言えるでしょう。
お互いに時間が無い中での横からの寄せ合いとなりました。
それでも一段飛車付きの銀冠は遠く、僅かに後手に分のある寄せ合いのようにも見えました。
なんといっても銀冠ですから。後手の囲いの方が格好いい……なんて、ふふっ。
しかし先手も巧みに後手の虎の子だった馬を消し、ぎりぎりの勝負となりました。
虎の子が馬とはこれいかに、ですね。
さて、最後の△6四金の局面……北浜八段は時間に追われる中で駒台に手を伸ばそうとして一瞬躊躇い、手を泳がせるようにして垂れ歩を取りました。
感想戦で「これだけはなかった」と北浜八段が嘆いた通り、これが敗着級の悪手になってしまったようです。
ところで私にはあの時、北浜八段を角を手にしようとしていたように見えました。
それで、ふと思ったのですけど。
もしかして、ここで△9四角を打とうとしたのではないでしょうか?

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筋としては感想戦でも違う変化の中で出て来たのですけど、どうでしょう?
▲8三銀には△7一金と、これで先手の竜は死んでいます。
しかし▲8三銀△7一金▲6三歩成△7二金▲9四銀成△6三金▲4四角とした局面は……ちょっと私には難しいですね。

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△9四歩に先手が攻めきれるかどうか、でしょうか。
どちらに転んでもおかしくはなさそうです。

 

 

▲6二龍△5五歩▲4三銀△6三金打▲5二龍△6一角▲3二銀成△同 銀▲1三銀△同 香▲1二金まで先手藤井九段の勝ち。

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ともあれ実戦は△6四金でしたので▲6二龍とついに竜が解き放たれ、最後は▲1三銀~▲1二金の捨て駒が鮮やかな決め手になりました。
この局面で北浜八段が投了、先手藤井九段の勝ちとなりました。

本局を総括して、そうですね。
途中まで後手の北浜八段が優勢になったように見えたのですが、そこからの藤井九段の粘り強い指し手が逆転を呼び込んだのだと思います。
また双方が秒読みに追われながらもぎりぎりの状態で指し手を選んでいく様子は見ていてとても緊張感がありました。
他のアイドルのみんなも非常に盛り上がっていましたね。
面白い対局をありがとうございました。

 

高垣楓