同志アナスタシアの革命的観戦記(棋王戦第2局渡辺-佐藤天)
第二局開幕【8時50分頃】
アナスタシア:
ドーブラエウートラ!おはようございます。アナスタシア、です。
アナスタシア:
今、私達は合宿所にいます。そこから、レッスンの合間に棋王戦の進行を見ながら、喋っていきます。
奈緒:
リアルタイム観戦記ってやつだな。私が聞き手、アーニャが解説、加蓮が記録と書き起こしをしてくれるぞ。
加蓮:
はーい。まあ私はもう出ないから名前出さなくていいよ。それじゃ、始めちゃって。
奈緒:
いや、いきなり始めちゃってって言われても、あー……そうだな。じゃあアーニャ、これから第二局がスタートだけど、渡辺棋王と佐藤八段、この二人をどう見る?
アナスタシア:
渡辺棋王と佐藤八段、とても仲がいいですね。
奈緒:
二人は十代の頃に24のネット対局で当たって、お互いの正体を知らずに指してて、それ以来の付き合いなんだそうだ。盟友ってやつだな。
アナスタシア:
ハラショー!レーニンとトロツキー、ですね!
奈緒:
ん、んんん?
アナスタシア:
そうするとスターリンは糸だn…
奈緒:
ちょっと待った!この話はやめよう!
アナスタシア:
……友人同士の勝負の話、駄目ですか?
奈緒:
それは駄目じゃないんだけど、今はやめとこう。な?
アナスタシア:
ダー、分かりました。
奈緒:
だ、第一局は渡辺棋王が勝ったけど。これは大きいんじゃないか?
アナスタシア:
ダー!勝ち星は大事、ですね。行列に並んでも手に入らないもの、貴重です。
アナスタシア:
ニェット!次は佐藤八段が後手です。佐藤八段の横歩取りはとても強いです。
奈緒:
じゃあ、佐藤八段の横歩取りに渡辺棋王がどんな作戦を用意しているかが見所だな。
横歩取りへ【9時~】
棋戦:第41期棋王戦五番勝負 第2局
持ち時間:各4時間
先手:渡辺明棋王
後手:佐藤天彦八段
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲5八玉
アナスタシア:
横歩取り、ですね。
奈緒:
まあ、予想通りだな。
アナスタシア:
横歩は取るのがボリシェヴィキ……多数派、ですね。
奈緒:
ボリシェ……うん、まあ。
アナスタシア:
横歩取り、面白いですね。先手がいきなり歩を取ります。
奈緒:
そうだな。それでバランスが取れてるんだから面白いよな。
アナスタシア:
チェスでもポーンサクリファイス、あります。でもあれは、横歩取りと違いますね。
奈緒:
ああ、将棋は取った駒が使えるから。
アナスタシア:
私、初めて将棋のルールを知った時、とても感動しました。
奈緒:
あ、そうなんだ。日本人として嬉しいな。
アナスタシア:
ダー!捕虜を殺さないなんて、とても人道的です!取られたらシベリアに送られるのも、教育的で素晴らしいです!
アナスタシア:
アー、それで、先手の作戦は飛車を下げない…青野流、ですね?
奈緒:
これはちょっと意外な選択だったか?アーニャはどう思う?
アナスタシア:
佐藤八段、ねじり合い強いです。渡辺棋王は△5八玉7二銀型を避けて、急戦の勝負にしたいのだと、思います。
奈緒:
なるほど。お互いを知り尽くしてるからこその選択って奴だな。だけど、青野流自体が作戦としてどうなんだ?
アナスタシア:
最近は、減っていますね。後手に有力な対策、あるみたいです。
奈緒:
うん、そこも含めて注目だな。
青野流の変化【9時20分~】
△5二玉▲3六歩 △7六飛 ▲7七角 △2六歩 ▲3八銀 △7七角成▲同 桂 △5五角 ▲2二歩 △3三桂 ▲2一歩成 △4二銀▲2三歩
アナスタシア:
この将棋はすぐに詰む詰まない、なりますね。
奈緒:
急戦調だからな。短手数で終わるかも。
アナスタシア:
だけど、変化たくさんです。
奈緒:
ここまでのポイントはあるか?
アナスタシア:
△2六歩▲3八銀が入っているのが、気になりますね。これは、後手の得かもしれません。
奈緒:ほほう。詳しく聞こうか。
アナスタシア:
△2六歩▲3八銀がない方が、先手が陣が広いです。この二手で、先手陣、狭くなってます。銀が、鉄のカーテンになって、ツァーリ……王様が外に出られません。
奈緒:
あー、まあ、うん、そうだな。
アナスタシア:
悪い形、終盤で効いてきます。でもこの将棋、すぐに終盤になるから、心配です。
大事な時、ツァーリがベルリンの壁に……
奈緒:
な、なあアーニャ……なんというか、そのロシアの話、ちょっと控えないか?
アナスタシア:
どうしてですか……?
奈緒:
えっとだな、アーニャの話はアイドルとしてちょっと……
アナスタシア:
奈緒、ロシア嫌いですか?私、半分ロシア人です。奈緒がロシア嫌いだと、とても悲しいです。
奈緒:
そ、そういうわけじゃなくってだな……。
アナスタシア:
…………。
奈緒:
だー!分かった分かった!何でもないから続けてくれ!
アナスタシア:
ダー♪
奈緒:
はあ……。
アナスタシア:
変化は色々、あります。でも、どれも後手、良さそうです。
奈緒:
一直線で進めたらどうなる?
アナスタシア:
△2三金に▲8四飛△4五桂▲8一飛成△7七角成▲同金△同飛成▲7八歩△6六桂▲4八玉△6七竜に、▲8三角が詰めろ、なりませんね。
奈緒:
一直線だと後手の勝ちなんだな。▲6八歩のところで▲6八銀は?
アナスタシア:
▲6八銀 △6六桂 ▲同 歩 △5七桂成 ▲同 銀 △6七金▲4八玉 △5七金 ▲3九玉 △3七歩でどうでしょう?
奈緒:
なるほどこれは厳しそうだ。先手が良い変化を見つけられるかどうかになりそうだな。
アナスタシア:
▲2三歩でお昼休憩、です。奈緒、加蓮、ご飯食べましょう。
昼食休憩【12時~】
加蓮:
お昼ご飯はどっちも松花堂弁当かー
奈緒:
どっちも同じだと楽しみが減るよな。まあ、変な楽しみ方なんだけどさ。
アナスタシア:
分かります。対局者の食事とおやつ、楽しみです。
加蓮:
お、アーニャちゃんも分かってくれる~?
アナスタシア:
第一局は、佐藤八段、グラティネでした。
奈緒:
グラティネってわけがわからなくて焦ったよな(笑)
アナスタシア:
第二局はピロシキ、期待してました。
加蓮:
それで、私達のお弁当は?
奈緒:
ん?ああ、加蓮も松花堂弁当だぞ。対局者と一緒で良かったな。
加蓮:
え、うそ?何で?焼き肉弁当が食べたかったのに!
奈緒:
加蓮お前……そんな脂っこいもん食べたら……。
アナスタシア:
食べたら加蓮、どうなりますか?
奈緒:
死ぬ。
アナスタシア:
ブリャー!小梅しか加蓮と話せなくなります!
加蓮:
いや死なないから!
対局再開・終盤【13時~】
△同 金 ▲8四飛 △4五桂 ▲8一飛成 △7七角成▲同 金 △同飛成 ▲6八角 △6六桂 ▲同 歩
奈緒:
うーん……やっぱりチョコレートケーキにコーヒーだろ。
アナスタシア:
ダー!フルーツ、とても美味しそうです。
加蓮:
おーい、二人とも、局面進んでるよー
奈緒:
あ、しまった。えーと、どうなってる?あ、▲6八角打ったんだな。
アナスタシア:
△6六桂 ▲同 歩と取ったんですね。
奈緒:
同銀の時調べた変化で似た筋があったよな。
アナスタシア:
ダー。あの時は▲同歩しかありませんでした。でもこの場合、違う手、ありますね。
奈緒:
▲4八玉△6七龍▲8五角打△5七桂成▲同角△5八金▲3七玉△5七龍▲6四桂△4一玉……ちょっと足りないかな?
最終盤【15時~】
△5七桂成▲5九玉 △6八成桂 ▲同 銀 △7八龍 ▲6四桂 △6二玉
奈緒:
いよいよ大詰めだな。
アナスタシア:
後手もとても危険になりました。先手も角と桂……鎌とハンマーを持っています。
それが合わされば、とても強い力、生まれます。
奈緒:
うん、ああ、そうだな。うん。
アナスタシア:
先手の鎌とハンマーで後手のツァーリ……皇帝を……。
奈緒:
アーーーーーニャ!!後手の△6二玉は強い受けじゃないか!?
アナスタシア:
△4一玉▲6九角△7五龍▲7二歩は、先手が悪いとまで行かなくても、後手も一息つけましたね。強く勝ちに行った手だと、思います。
奈緒:
さあ、先手に迫る手はあるか!?
終局【17時~】
▲5五桂 △6九金 ▲4八玉 △6八龍 ▲3七玉 △4四角▲4六角 △5七銀 ▲7二歩 △4六銀成 ▲同 歩 △9二角▲7一歩成 △5七龍 ▲2八玉 △3八角成 ▲同 金 △2七銀まで66手で後手の勝ち
アナスタシア:
二つの角打ちがハラショー!……これが好手で、後手の勝ち、ですね。
奈緒:
△9二角がぴったりだったな。
アナスタシア:
ダー!△9二角は△5七竜▲4七桂△同角成▲同銀△2七歩成▲同玉△4七竜▲3七銀△1五桂▲1六玉△2七銀▲2五玉△2四歩▲1五玉△1四金の詰めろを掛けながら、竜取り、なってます。
奈緒:
終わってみたら66手かあ。
アナスタシア:
どうしても、短くなりますね。
奈緒:
まあ私達のこれも初の試みだからさ、短くて助かった意味もないとはいえないからな。
アナスタシア:
持将棋模様だと、加蓮の編集、大変です。
奈緒:
そういうこと。そういえばこれで棋王戦は1-1、王将戦も2-2だから、三番勝負が二つあるわけだな。
アナスタシア:
シャースティエ!とても楽しみです!
加蓮:
二人ともお疲れー!それじゃあ晩ご飯食べに行こ♪あれ、奈緒ぐったりしてどうしたの?
奈緒:
いや、何か無性に疲れてさ……。